日経ソーシャルイニシアティブ大賞に今年も応募しました。今日締め切りで、先ほどメールで送りました。
以下の三つの要件を満たすように書いていったのですが、まとめとして、やっぱり社会は障がいのある人が必要、ということが見えてきました。
1. 社会性 社会的課題の解決を事業のミッションとしている
2. 事業性 ビジネス的手法を用いて継続的に事業活動を進めている
3. 革新性 新しい事業モデルや社会的価値を創出している
問題となるのは「社会性」と「革新性」です。ここが一番評価されます。書くのに一番むつかしくて、一番楽しいところです。今年は少し切り口を変えることで、ぷかぷかがやっていることを再評価できたように思います。
「事業性」については、日々の「ぷかぷか」の活動そのものなので、あらためてここでは書きません。
ちょっとびっくりしたのは「直近1年間のトピックについて」という項目で、あらためてこの1年、ずいぶんいろいろなことをやってきたんだなぁ、と思いました。
社会性について
事業の目的:障がいのある人たちが生き生きと働ける職場を作る。
ミッション:障がいのある人たちと一緒にお互い気持ちよく生きていける社会を実現する。
解決を目指す課題:障がいのある人たちの社会的生きにくさ
障がいのある人たちは「理解力が低い」「仕事が遅い」「なに考えているかわからない」といった理由で社会の中で疎外されることが多い。このマイナス方向の評価が障がいのある人たちの社会的生きにくさを生んでいる。この問題の解消のためには、障がいのある人たちに対するマイナス評価を超えるプラス方向の評価を作り出すことだと思う。「ぷかぷか」がやってきたことは、事業を運営していく中で彼らに対するプラス評価をたくさんのお客さんと共有してきたことだと思う。
障がいのある人たちが社会の中で生きにくいとき、いいかえれば社会の中で受け入れる人間の幅が狭くなるとき、私たちもまた窮屈になり、生きにくい社会になる。障がいのある人たちを排除する社会は、だんだん豊かさを失っていく。いろんな人がいること、それが社会の豊かさだからだ。彼らが生きやすい社会は、誰にとっても生きやすい社会であり、それが社会の豊かさといえる。「ぷかぷか」はその豊かさを社会に取り戻そうとしている。
「ぷかぷか」は「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージを、日々ホームページやFacebookページ、ぷかぷかしんぶんなどで発信し続けている。このメッセージは、「ぷかぷか」代表の高崎が養護学校で教員をやっているときに、知的障がいの人たちに惚れ込んでしまい、「彼らと一緒に生きていきたい」「一緒に生きていった方が得!」と思ったところから始まっている。
「一緒に生きていった方が得!」と思ったのは、障がいのある人たちにとても豊かなものを感じたからだ。もちろんいろいろできないことがあったり、問題を抱えていたりすることも多い。でも、それらを超える豊かなものを彼らは持っている。彼らとおつきあいすることは、私たち自身の人間の幅を広げ、人生を豊かにすることだ。
定年退職後、街の中に彼らの働くお店を立ち上げたのは、彼らと一緒に生きていきたいと思ったことと、街の人たちに素敵な彼らに出会って欲しい、彼らの持つ豊かさに出会って欲しいと思ったからだ。それはそのまま「プラス方向の評価」をたくさんの人たちと共有することであり、彼らの社会的生きにくさの解消につながっていく。
実際に彼らの働くお店を開くと、パン屋、カフェ、お惣菜屋など、にぎやかで、それでいてホッとする雰囲気の中で彼らと出会い、「ぷかぷかが好き!」という人がどんどん増えてきた。福祉事業所を応援する、というのではなく、単純に「ぷかぷかが好き!」なのだ。障がいのある人たちの魅力に出会ったということだろう。「ぷかぷかが好き!」という言葉は、彼らへの素直な「プラス評価」だ。「今までなんとなく嫌だなって思っていたけど、彼らのことを知ると、なんだか素敵な人たちね」とお店で彼らと出会った人たちは言う。
「なんとなく嫌だ」が「ぷかぷかが好き!」に変わったことはとても大きな変化だ。障がいのある人たちの社会的生きにくさを生んでいる彼らへの「マイナス評価」が、お店に来ることで「プラス評価」に変わったということだ。
「ぷかぷか」は障がいのある人たちが生き生きと働くことのできる場を運営しながら、障がいのある人たちに「プラス評価」をするお客さんを増やし、地域社会を少しずつ豊かにしている。
革新性について
空気を読んだり、まわりに合わせることばかり考える社会は息苦しく、窮屈きわまりない。知的障がいのある人たちは、空気を読むことも、まわりに合わせることもあまりしない。そういったものからとても自由。「ぷかぷか」は、そんな彼らが、ありのままの自分でいられる場所になっている。そして、ありのままの彼らを、利益を生み、社会を豊かにする「新しい価値」としてうまく事業に取り入れている。
「ぷかぷか」のスタッフは、障がいのある人たちと「一緒に生きていく」というスタンスを取っている。だから彼らに対し、管理的な立場は取らない。彼らが「ぷかぷか」でありのままの自分でいられるのは、そこから来ている。
ありのままの彼らを大事にしたいので、接客マニュアルは使わない。それを使うと「彼ららしさ」がなくなるからだ。マニュアルがないので、決してうまいとはいえない接客だが、一生懸命さだけはしっかり伝わる。みんなの思いがお客さんの心にストレートに届く。それがお客さんにとって、とても心地いい。
お店に来て、ありのままの自分で働く彼らの姿を見ると、「なんて自由な人たちなんだ」と心が癒やされるお客さんが多い。社会がだんだん窮屈になり、その息苦しさの中で、ふっと出会った彼らのとんでもない自由さととびきりの笑顔。ホッとして体の力が抜けたのだろうと思う。救われた気持ちになった人も多い。そうやって「ぷかぷかが好き!」「ぷかぷかのファンです」という人が増えていった。
障がいのある人たちは、社会に合わせることを求められることが多い。そうしないと社会の中で生きていけないと思われているからだ。「ぷかぷか」では、彼らを社会に合わせるのではなく、彼らに社会を合わせようとしている。だから「ありのままの彼ら」を大事にし、それで仕事をしてきた。結果、「ぷかぷかが好き!」「ぷかぷかのファンです」というお客さんが増えてきた。
「ありのままの彼ら」が収益を生み、お客さんに豊かなものを提供している、ということだ。これは今までなかった「新しい価値」と呼んでいいと思う。みんなの心をぽっとあたたかくする「新しい価値」。息苦しさの増す今の社会だからこそ、両手で包み込みたいほどに大事にしたい「新しい価値」だと思う。
社会はだから、障がいのある人たちを必要としているのではないかと思ったりする。彼らの作り出す「あたらしい価値」は、息苦しさの増す今の社会を救う手立てを示しているのかも知れない。
「ぷかぷか」に彼らがいなかったら、ただのパン屋でしかなく、これほどすばらしい物語は生まれなかった。彼らはやはり社会に必要なんだと思う。
直近1年間のトピックについて
5-1 みんなでワークショップ
ぷかぷかで働く障がいのある人たちと地域の人たちで演劇ワークショップをおこない、その記録映画ができあがって5月に上映会をおこなった。
記録映画を見た人たちの感想。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/05/24/020839
2015年9月からスタートした第2期みんなでワークショップ
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/11/25/002448
5-2 大きな絵地図が区役所のロービーに飾られることになった。
緑区民まつりで地産地消のブースを「ぷかぷか」がデザイン、制作し、テントの横に地産地消サポート店の大きな絵地図を描いて展示した。その絵が高く評価され、緑区役所のロビーに飾られることになった。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/10/18/234919
5-3 人権研修会
緑区役所で人権研修会があって講師を頼まれ、ぷかぷかで働く障がいのある人たちも講師になって参加。今までにない画期的な人権研修会になった。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/12/23/013407
5-4 プロモーションビデオ
ぷかぷかのプロモーションビデオを作ることになった。ぷかぷかの宣伝というより、ぷかぷかのほっこりしたあたたかさを社会に広げるようなプロモーションビデオ。「一緒にいると、心ぷかぷか」がタイトル。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/12/24/011608
5−6 読売福祉文化賞
演劇ワークショップが読売福祉文化賞を受賞した。多様な文化の発信が評価された。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/12/10/001827
5−7 未来を豊かにする子どもたち
パン教室は未来を豊かにする子どもたちを育てている。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/12/06/231742
5-8 子どもたちにオペラをプレゼント
子どもたちの心を豊かにしようとオペラをプレゼントした。
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2015/07/20/001020
日経ソーシャルイニシアティブ大賞