ぷかぷか日記

ただのパン屋の話だったら

 知り合いの方が、自分の子どもの通っている支援学校の保護者の勉強会でぷかぷかの話を聞きませんか?と投げかけたところ、

「ただのパン屋の話だったらみんな聞きたいかどうかわからない」

とか言われたそうで、ぷかぷかのことを知らない、というのはこういうことだと思いました。

 ぷかぷかが始まるとき、横浜市の空き店舗活性化事業に応募し、650万円もの開業資金をいただいたことがあります。そのときに審査員だった方に、

「どうしてぷかぷかが選ばれたんですか?」

と、聞いたことがあります。そのとき返ってきたのは

「ぷかぷかは、ただのパン屋じゃないって言うか、なんだかおもしろそうな広がりが期待できそうだと思ったからです」

という言葉でした。審査の時のヒアリングや、最終審査のプレゼンテーションを聞いてそんなふうに思ったというのです。

 うれしい評価でしたが、実際

「なんだかおもしろそうな広がりが期待できそう」

って評価されたことが、この6年間でほんとうに実現できたと思っています。

 

 「ぷかぷかが好き!」とか「ぷかぷかのファン」という方がずいぶん増えました。どちらかといえば社会のお荷物のように受け止められている障がいのある人たちの社会的な位置づけを考えると、奇跡のようなことがぷかぷかのまわりには起こったのではないかと思ったりします。

 しかもそういったことが、「障がい者と共に生きていきましょう」なんてことを言ったわけでもなく、毎日楽しく働いていると自然にそういうお客さんが増えてきた、というところがぷかぷかのおもしろいところだと思います。

 障がいのある人たちと一緒に生きていくにはどうしたらいいのか、というのは昔からあるとてもむつかしいテーマであり、なかなかいい形で実現できなかったと思うのですが、それを「インクルージョン」とか「共生」とかいうむつかしい言葉を使ったりすることもなく、毎日楽しく働いて、気がつくと、そんなぷかぷかの雰囲気が好き!という人が増えていた、というのがいかにもぷかぷからしいと思うのです。

 無理して障がいのある人達と一緒に生きていこうとしているのではなく、「一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージに素直に共感し、「一緒に生きていった方がいいね」って思う人がぷかぷかのまわりに増えているということ、そういう形で社会がいい方向に変わりつつあること。地域社会がそういう形で豊かになっている、ということです。

 これって、ですから、結構すごいことを「ただのパン屋」が実現してるんじゃないかって思ったりするのです。

 地域の人たちといっしょに芝居作りをやったりもしています。お客さん達と一緒に芝居作りをやるパン屋なんて、日本中、どこを探してもないんじゃないかと思います。障がいのある人たちと一緒だからこそ作り出せる「新しい文化」といっていいほどのものを大きなホールの舞台で表現しています。

 ぷかぷかは「ただのパン屋」です。でも、その気になれば「ただのパン屋」であっても、こんなにもたくさんの素敵な物語を生み出せる、ということをぷかぷかは証明したんだと思います。

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