あれができない、これができない、とマイナス方向の目線で相手を見ている限り、相手との関係はどこまでもマイナス方向であり、そこからは新しいものは生まれません。
障がいのある人たちとの関係は結局のところ、そういうものではなかったかと思います。そこから新しいものなんか生まれない…と。
彼らと一緒にやる演劇ワークショップは、あれができない、これができない、ではなく、一緒にやればなにかおもしろいものが生まれるんじゃないか、というプラス方向の思いから生まれています。それは彼らと最初にどう出会ったか、ということだと思います。「あっ、おもしろい人!」と思うか、「何もできない人」と思うか、です。私はたまたま、養護学校の教員になったとき「ひゃ〜、なんておもしろい人たちなんだ」って思えるような出会いがありました。もちろんいろいろできないことはありました。でも、そのできないことを超えるおもしろいものを彼らは持っていました。そのおもしろさと出会えたこと、それがすべてのはじまりだったように思います。
こんなおもしろい人たちと芝居を作れば、今までにないおもしろいものができるんじゃないか、と思って始めたのが演劇ワークショップでした。芝居に行き着く前の、演劇ワークショップの空間そのものが、彼らと一緒にやることで、ほんとうにおもしろいものになりました。今まで体験したことのない、すばらしく豊かな空間でした。演劇ワークショップというクリエイティブな空間を彼らが支えていることは明らかでした。新しいものを一緒に創り出していく「クリエイティブな関係」は、ここから始まりました。
あれができない、これができない、といわれている人たちと新しいものを一緒に創り出す「クリエイティブな関係」ができた、というのは画期的なことだと思います。そのクリエイティブな関係の中で創り上げたのがみどりアートパークの舞台で上演した歌劇『森は生きている』です。
映画『ぷかぷか』はそれができるまでの過程を克明に追いかけたドキュメンタリーです。
あれができない、これができない、といわれている人たちと、どうやって「クリエイティブな関係」を作っていったのか、その関係の中で、どうやってあのすばらしい舞台作品を創っていったのか、そういったことが見えてくる貴重な映画です。
彼らとマイナス方向での関係しかないのは、すごくもったいないと思っています。彼らと前向きのいい関係を作れば、すばらしいものがたくさん生まれてきます。元々そういうものをたくさん持っている人たちだと思います。それをうまく引き出せば、社会全体がもっともっと豊かになります。その手がかりがこの映画にはあります。
ぜひ見てください。