60歳で新しい事業を立ち上げるなんて、気力、体力、集中力を考えれば、無理無理、と先輩にいわれながらも始めたぷかぷかが、もう6年も生き延びて、気力が落ちるどころか、ますます意気軒昂の昨今。予想もしなかった「ぷかぷかのファン」は増えるばかりでうれしい悲鳴。それでも寄る年波は大丈夫か、と今年も「気力、体力、集中力」を試される版画の年賀状にチャレンジ。
エンジンのかかりは去年よりも悪かったものの、彫刻刀を手にしてからは楽しい時間になりました。約4時間で彫り上げ、まずまずのできだと思っていたのですが、刷ってみると集中力の低下を見つける羽目になり、かなりガッカリ。
なんと文字が逆さまになっていたのでした。版画は逆さまに文字を彫っていきます。薄い和紙に文字を書いて、それを裏にして版木に貼り付け、その上から彫っていけば間違えることはないのですが、なんかおもしろくない気がします。書かれた文字をなぞるだけでは、彫刻刀で彫っていく楽しさ、緊張感がなくなるからです。それでいつも鉛筆でラフな文字を版木に書き、それを見ながら彫っていくのですが、当然彫る文字と鉛筆の文字ははじめからずれていて、途中でだんだんわからなくなります。でも、このわからなくなった頃が、どんなふうに彫るかをいちばん考えなければならないときで、私はいちばん好きです。
「あ」とか「め」という字を逆さに彫るのは、すごくむつかしくて、別に用意した紙にあらためて書いたりして確かめるのですが、今年はその作業がとてもむつかしい気がしました。
画像認識の力が衰えてきたというのか、「あ」とか「め」を裏返した文字がなかなかイメージできないのです。これには困りました。ごまかしながら何とか彫りましたが、刷り上がった文字には、ごまかしがそのまま出てしまいました。
それ以上にショックだったのは、簡単な文字が逆さになっていることでした。「け」と「と」の文字です。こんな文字を間違えるなんて、これはもう集中力の衰え以外何物でもないですね。ま、それでもこの程度なら、この1年、何とかがんばれそうな気がします。
それでも彫っている時間はものすごく楽しくて、至福の4時間でした。
「け」と「と」の文字は、ま、愛嬌だと思って見てやってください。
今年は夢見る猿だけでなく、世の中をしっかり見る猿、言う猿、聞く猿になりたいと思っています。よろしくお願いいたします。
(高崎)