アート屋わんどでやった「おしゃべりな森をつくろう」と「大きなクジラを描こう」ワークショップに講師としてお招きした金子さんとは,30年ほど前、町田養護学校でワークショップをやったときに知り合いました。町田養護学校の教員でした。最初に詩の朗読ワークショップをやり、それがすごくおもしろくて、今度は黒テントの役者も加わって演劇ワークショップをやり、更に生徒達といっしょにオリジナルな芝居に挑戦したりした元気のある教員集団の一人でした。町田養護学校がいちばん輝いていた時代だったように思います。
3年ほど前、ぷかぷかに来た方の息子さんが金子さんが開いている絵の教室に行っている話を聞き、そこからまたおつきあいが再会し、ワークショップの講師に招いたというわけです。
金子さんの教室に来ている人たちの描いた楽しい絵のミュージアム「くすくすミュージアム」
http://www.curious.co.jp/kuskusmuseum/sakuhin/sakuhin.html
金子さんが対談の形で語る絵の世界がすばらしいです。
下に載せたのは、このサイトの中の「きょうのまねきねこ」
http://www.curious.co.jp/kuskusmuseum/manekineko/manekineko.html
と題した金子さんのブログから、わんどでやったワークショップの部分をコピーさせてもらったものです。
講師として来ながらも、金子さん自身が楽しんでいることがよくわかります。私自身、演劇ワークショップを企画、進行しながらも、いつも私自身がいちばんわくわくしながら楽しんでいるので、金子さんの気持ちが手に取るようにわかるのです。
何やってもそうですが、自分がまず楽しむこと。しかも思いっきり楽しむこと。それがなければ、みんなを楽しませることなんかできないな、と思うのです。
先日ぷかぷかを見学に来られた人たちは、こんなに楽しく働いている福祉事業所ははじめて見ました、とおっしゃっていましたが、なんだかんだいいながらも、私自身がいろいろ楽しみながらぷかぷかをやっていることが大きいと思います。
10月18日(日)の区民まつりの地産地消ブースの準備をいろいろやっているのですが、この三日間はヨッシー連れて地産地消サポート店の主の似顔絵を描いて回りました。似顔絵を描くことでその場の関係がふわっとやわらかくなり、こういうことがすごく楽しいですね。地産地消ブースはそんな楽しさがわ〜んと渦巻く予定です。
話がそれました。とにかく金子さんがワークショップをどんなふうに楽しんでいたか、読んでみてください。あなたもきっとわくわくすると思います。
Vol.313 わんどのワークショップ
一週間前の蒸し暑い午前、ぷかぷか村のアート屋わんどでワークショップをやった。
ぷかぷか村というのは、vol.303「迷いに迷って、ぷかぷか・わんどに辿り着いた」でも紹介している横浜市緑区霧が丘にあるワーキングスペースで、障がいのある人やない人が一緒にお惣菜を作ったり、パンを焼いたり、カフェをやったり、アート屋さんもあったりする。
気のおけない仲間たちが集まるわんど(水辺の水たまり)みたいなところで、ボクはそこを「ぷかぷか村」と呼ぶことにしたのだ。
アート屋に集ってきたのは、3才の子どもから大人まで20人くらい。
みんなでやったのは、ボクのワークショップの定番「おしゃべりな森をつくろう!」。
これはもう何回か、ここでも紹介しているので、その内容は紹介しない。
紹介したいのは、このワークショップに参加したSさんから送られてきたメール。
ああ、こんな風に心が開かれて来るんだということが書かれている。
「・・・・久しぶりのワークショップ参加だったので不安な気持ちも持ち合わせていたのですが、始まってしばらくすると楽しいし、周りの子どもたちの自由な発想に刺激されて、ふわっと解放されていくのを感じました。
初めて会う人ともこういうことが起こるのが一緒に楽しむちからなんだなあと改めて感じました。
みんなが楽しめる仕掛けもちりばめられていて、体験しないと分からないことがいっぱいあるな~と思いました。本当は臆病さを乗り越えて、もっとWS(ワークショップ)にチャレンジできたらいいんだろうなあと感じました。
自分に何が出来るのか悩みはつきませんが、手さぐりしていくしかないですね!では、また!」
ワークショップにはいつも一期一会的なドキドキ感があって、それに包まれるってことからワークショップは始まる。
そんなドキドキ気分は、多分、メールをくれたSさんだけでなく、参加してくれた近所のお母さんや子どもたち、ぷかぷか村で仕事をしている仲間たち、それからボクも同じで、そんな人たちを見ていると、ボクらは水辺に集ってきたザリガニやおたまじゃくし、あめんぼうのような気がしてきた。
で、ぷかぷか村のワークショップのイメージは、おしりを振ったり、腰をくねくね、ハサミをちょっきん、ちょっきん・・・そんな生き物たちの自由なダンスが広がっていくものになった。
Sさんのメールを読むと、それは多分うまくいったのだろう。
/ふわっと解放されていく感じ/一緒に楽しむちから/体験しなと分からないことがいっぱい・・・Sさんの言葉は、ボクのワークショップのキーワードで、ボクは水に向かってジャンプするカエルのように愉快な気分になる。
ああ、わんどっていいね。
いろいろな生き物が集った水たまりは、もう一つの生命のようにプルプル震え、いのちの歌を歌っている。
きっと、それは広大無辺な宇宙の中の小さな青い水たまりのわんどにも繋がっている気がする。
Vol.319 同調したり、邪魔したり
先週の土曜日、横浜のぷかぷか村で2回目のワークショップをやった。今回は「自由なクジラを描こう!」。大きさは180×300cmのちょっとした大作?
事前にアート屋わんどの住人のみなさんに、雑巾を丸めた筆で紙いっぱいにクジラの輪郭を描いてもらい、からだにはマス目をひいてもらっていた。
でも、そのクジラ君、ちょっと線が硬い。自由に海を泳いでいるというよりも、紙の上に貼り付けられたみたい。マス目に描かれた絵模様もきっちり丁寧にマス目に描かれていて、一つひとつは面白いけれど、パッチワークされた旗みたいで、マス目に閉じ込められている。
で、このクジラ君が自由に海原を泳いでもらうようにするのをこの日のワークショップのテーマにした。
集まってきたのは、ぷかぷか村の住人と地域の小さな子どもたち、普段は一緒に何かを作ったり、遊んだりすることはないメンバーだ。
ぷかぷか村の住人はどちらかというと大人しくて自分のスタイル、ペースで淡々と描いていく人たち。一方、子どもたちは3才から5才の子どもで、やりたいことはどんどんやっていく人たち。
この人たちが、クジラ君の上でどんな活動を展開するのか、ぶつかりあって、ちょっとしたバトルでもあったら、クジラ君もエネルギーを得て海に泳ぎだすかもしれない・・・そんな期待を持ってスタート!
今回は隠し味に、ちょっとしたオリジナル筆を使った。例えば、木枝の先に雑巾を括り付けた筆やポンポン筆など・・・簡単には色や線が思い通りには描けないいつわものの筆たちだ。それを使うと、みんな自分の既成イメージで描くのをあきらめ、結果的に今までにない自由な線や色が生まれることが多いのだ。
いざ始まってみると、クジラ君の上には2つの表現スタイルが現われた。一つは、ゆっくりマス目に描いていく丁寧型。もう一つは線から線へ、色から色へ、マス目なんか越えて自由に塗りつぶしていく奔放型。
この2つの表現潮流、どちらが圧したかというと、当然奔放型。3歳の子どもたちの圧勝である。ぷかぷか村の住人の描いた月や星、女の子といった絵の上を一気になぐり描きで塗りつぶし、「お終い!」の合図まで止まることはなかった。躊躇なんてない。
ボクが感心したのはぷかぷか村の住人の態度。もしかしたら、「自分の描いた模様の上には描くな!」って怒るかなと思ったら、泰然自若。みんなに合わせ、自分もなぐり描きのスタイルに変えていったこと。ボクなんかとは器量が違うねと感心。
ワークショップを終えてOさんから感想メールが届いた。
「楽しかった、面白かった、描きたい自分に出会えました。線を引く、右手で、左手で、目を閉じて、いろいろやりました。色を塗る、指で、ポンポン筆もたたく、こする、転がす、とにかく色をなすりつけました。気持ちよかったです。枠を出たい、はみ出したいとずっと感じていました。今そんな心理なんだと思います。隣で描いている人の気配を感じて同調したり、ちょっと邪魔したりしながら描くのが面白かった。全て個人的感想です。」
ワークショップの醍醐味がそこには書かれている。
いまクジラ君はどこにいるかというと、アート屋わんどの壁で、ゆうゆうと泳いでいるのである。