先ほど日本テレビ「世界の果てイッテQ」でマッキンリー登頂をやっていました。40年ほど前ですが、ここに登ったので、とても懐かしい思いで見ました。
クレバスやら、両側が切れ落ちたやせた尾根やら、急斜面やら、テレビを見ていても緊張するところがいっぱいあって、よくあんなところに登ったよなと思いました。25歳、若かったですね。あの頃は怖いものがなかったですね。
テレビでは6人ものプロの登山家がつき、装備もすごいものでした。私が行ったのは40年前ですから装備も今に比べれば、実に貧相なもの。素人ばかり3人だけで登ったので、海外登山の経験もなく、若さと、度胸と、運だけで登った感じです。クレバスに落ちなかったのも運がよかったんですね。
インターネットもスマホもない時代でしたので、天気予報もできず、その日その日の天候の具合を見ながら前に進む、というきわめて原始的な登山でした。今日の映像では危険な箇所にロープが張ってありましたが、40年前はもちろんそんなものはなく、ひたすら自分たちだけで登りました。
綿密な計画を立て、その上で行ったわけではありません。山仲間の飲み会で、海外の山に登ろう、という話はしょっちゅう出ます。でもたいていは翌日酔いが覚めると忘れてしまいます。でもなぜかマッキンリーの時は、翌日酔いが覚めてもしっかり覚えていて、その日は会社休んで、東京は赤坂にあるアラスカ州政府事務所に行きました。マッキンリーに登りたいので、そのための資料を見せて欲しい、と。
マッキンリーに登るためにはどれくらいの経験、実力が必要だとか、どれくらいの資金が必要だとか、といった計算は全くしませんでした。あったのは「マッキンリーに登りたい!」という思いだけでした。もちろん行く!と決めてからは猛トレーニングをやりましたが。氷壁を登る特訓もやりましたね。厳冬期の富士山の頂上付近でビバーク用の薄っぺらなテントで震えながら寝たこともあります。耐寒訓練のつもりでした。
何かをするときは、お金が貯まったらやろうとか、力がついたらやろう、なんて思っていたら、絶対にできません。「やろう!」って思ったときに、とにかく具体的に一歩踏み出す。これが一番大事だと思います。そこから実現へ向けて全力疾走です。
オペラ『ロはロボットのロ』を決めたときも、再演のお知らせを見て、すぐに「やります」って、手を上げました。お金のことはもちろん、どうやって公演まで持っていくのか、といったビジョンも全くないまま、手を上げたのです。お金が貯まったらやろう、とか、ビジョンができたらやろう、なんて考えていたら、多分できなかったと思います。
もちろん失敗のリスクもあります。でもそのリスクがあるからこそ、人生おもしろいのだと思います。計画したことが計画通り行くのは、当たり前のことであって、おもしろくもなんともありません。あえてどうなるかわからないリスクを背負い込み、そこに全力を集中するところにこそ、生きていく楽しさがあるのだと思います。
で、マッキンリーの頂上に立って何したと思います?凧を飛ばしたんですよ。ものすごい風だったので、ほんの一瞬、ぶぁっと飛んだだけでしたが、そういうばかばかしいことに賭けたというか、だから楽しかったのだと思います。一つ間違えば命すら落とすようなところで、なおも凧を飛ばすという遊び心こそ、大事な気がします。
古い写真ですが、これがマッキンリーです。標高6,190メートル。呼吸するのが苦しい高さでした。
鯉のぼりを持っているのが私です。なんでこんなところで鯉のぼり?それがタカサキの謎です。