先日池袋のアウルスポットまで『ロはロボットのロ』を見に行きました。帰りがけ、そういえば、とパキスタンの山間で、たった一人浪々と歌を歌っていた少女を思い出しました。
40歳になった時、「人生40周年記念イベント」と称して、折りたたみ式の自転車担いでパキスタンまで行き、インダス川の源流地帯を700キロメートルくらい走ったことがあります。7000〜8000メートル級のカラコルム山脈の山間のがたがた道をひたすら自転車こいで走ったのでした。
1000メートル近いアップダウンの連続で、ものすごいハードな旅でしたが、アラスカのマッキンリーに登って以来の楽しい旅でした。
からからに乾いた世界で、沢があると、そのたびに頭から水をかぶって走りました。ところがずぶ濡れになったシャツが30分もしないうちに、もうからからに乾くくらい乾燥した世界でした。
そんな世界でもオアシスのような村には杏がたわわになっていて、木々の緑が目にしみました。
村はずれの小高い丘を走っている時、どこからか歌声が聞こえてきました。高校生くらいの女の子がたった一人で、広い谷間に向かって歌っていたのです。誰が聞いてるわけでもなく、このとてつもなく広い場所で、たった一人で歌を楽しんでいました。乾ききった空気の中を、くっきりとした声が響いて、なんて気持ちのいい歌い方なんだろう、って、なんだか感動してしまいました。
「ロはロボットのロ」のココは、舞台の上の階段のてっぺんで、星の瞬く夜空を背景に「ココのアリア」を歌います。テトへの思いがめいっぱい伝わってくる歌でした。
ココが一人朗々と歌うその歌いっぷりに、ふと昔パキスタンの山間で聞いた女性の歌を思い出したのでした。ひょっとしたら彼女も思いを寄せる人がいて、一人丘の上で歌っていたのかな、なんて思ったりしたのでした。
歌うといえばカラオケしか思い浮かばない私たちから見れば、なんてスケールのでかい歌い方、生き方なんだろうと思います。とてつもなく広い大自然の中で、なんて自由な生き方をしているんだろうと思いました。
そんなことを思い出させてくれた「ココのアリア」に拍手!です。
6月13日(土)、7月4日(土)の歌のワークショップでは歌役者の飯野薫さんに「ココのアリア」を歌ってもらう予定でいます。みんなでいっしょに歌う時間もあります。