オペラ『ロはロボットのロ』の稽古場見学に行ってきました。ファンクラブのサービスの一つで、公演の前に稽古の様子を見せてくれます。
昔はこんなに立派な稽古場はなく、世田谷の小さなマンションの一室でやってたことを覚えています。『セロ弾きのゴーシュ』の初演の頃ですから、もう30年くらい前のことですね。あの頃小学生だった子どもが、今はこんにゃく座の制作のチーフをやっているのですから、時代が進むというのはこういうことなんだとつくづく思います。
稽古場に入ると、『ロはロボットのロ』の原作者であり、演出家の鄭義信(ちょんういしん)さんがいました。鄭さんは昔養護学校の生徒と地域の人たちでワークショップをやっていた時、ファシリテーター(進行役)として黒テントから来ていました。その後劇作家、演出家として独立し、こんにゃく座の作品もいくつか手がけています。
なんとも優しい心の持ち主で、『ロはロボットのロ』でもほろっとしてしまうところがあります。
オペラの曲を書いた萩京子さんもいらっしゃいました。萩さんも昔ワークショップに来ていただき、みんなで歌作りをしたことがあります。海老名でオペラの公演をした際、お客さんの中に、昔私がやっていたワークショップに参加した人がいて、その時の記録写真集を持ってきてくれたそうで、その中には私が写っていたんですよ、と萩さんがお話ししてくれました。30年も前にやっていたことが、今、こうやって人と人を結びつけていることに、なんだか感動してしまいました。
ココの家が火事になるシーンの稽古をしていました。金貸しのマニーがお金を返せなくなったココのお父さんのパン工場に火をつけたのです。燃えさかる火の中にロボットのテトが飛び込んでいく、ものすごくエキサイトするシーンです。
この燃えさかる炎をピアノ一つで表現するこんにゃく座のオペラを「すごいなぁ」と昔感心したことを今でも覚えています。こんにゃく座のオペラと出会った頃ですね。
炎の中でテトがココを見つけ出すシーンを何度も何度も繰り返し練習していました。プロの役者とは言え、演技を途中で止め、演出家の指示を聞き、また途中から演技をはじめる、というのは、いきなりテンションを自分で上げるわけですから、すごい大変だろうな、と思いました。
金貸しのマニーは火事の中で足をひねり、テトに助けを求めます。
「自分で火をつけたんだから、巻き込まれてしまえばいい」
と、テトは突き放します。そのとき、テトの背中に負ぶわれていたココは
「助けてあげて!」
と叫びます。
演出家が
「だめ、もっと力強く」
と、だめ出しをします。またマニーが助けを求めるところからやり直し。
「助けてあげて!」
力強い叫びに変わりました。
「こいつは悪いやつだけど、ここで助けないと、私たちはもっと悪いやつになる」
ここが作者鄭さんの優しいところです。
ココの言葉に促され、テトはココといっしょに金貸しのマニーもいっしょに助け出します。
炎が収まり、テトがココとマニーを抱えてよろよろと階段を降りてきます。
ここで歌われる歌が私は好きです。つい先ほどまでの燃えさかる火事の歌から、がらっと変わって、心からホッとするような歌です。
♪…雨が上がると、空には七色の虹がかかり、
街の人たちは、もう一度抱き合った
希望が失われていないことを
確かめ合った ♪
こういうシーンを歌で表現するところがオペラの一番すばらしいところだと思います。
7月19日(日) 午後2時からみどりアートパークで『ロはロボットのロ』の公演をやります。ぜひ見に来てください。
チラシはホームページの「横浜公演のチラシができました」のお知らせの下にあるダウンロードボタンをクリックしていただけると鮮明なものがご覧になれます。
http://pukapuka-pan.xsrv.jp/index.php?FrontPage
公演に向けての寄付をぜひお願いします。