ぷかぷか日記

5年たちましたーその3 ここにしかない価値!

 「カフェで元気に笑顔で働いている利用者さんを見ると、心が癒やされます、だからまた行こうと思うのです」と言ってくださるお客さんが何人もいます。

 5年前、カフェを開く前に接客の練習をしたことがありました。接客に詳しい講師に来ていただいて、講習会をやったのです。講師の方のいうとおりにやれば、確かに「正しい」「いい接客」ができる感じでした。でも、マニュアル通りにやるというのは、なんかつまらないなと思いました。利用者さんの持っている味というか、魅力が全く出せない感じでした。いや、むしろそういうものは出しちゃいけない、という雰囲気でした。マニュアル通りに管理された接客です。マニュアル以外のことはやっちゃだめなんですね。彼らの持っているなんとも魅力ある味が出せないなら、全然意味ないじゃん!と思い、講師を呼んでの接客の講習会はそれ一回でやめました。

 私は養護学校の教員をやっている頃、彼らに惚れ込み、彼らと一緒に生きていきたい、一緒に生きていった方が「得!」と思って、彼らと一緒に働くお店を開きました。そのお店で、惚れ込んだ彼らの魅力が発揮できないなら、お客さんの「得!」にならないじゃないか、と考えたのです。お店に来て、彼らの魅力にふれ、癒やされ、ああ来てよかった、と思う「お得感」こそ、ぷかぷかが世の中で勝負できるもの、「ここにしかない価値!」だと思っていました。

 ですから、お客さんに不愉快な思いをさせない、というその一点だけ守ってもらえば、あとは利用者さんと現場スタッフに任せようと思いました。利用者さんはみんなまじめですから、どう接客したらいいかを自分で一生懸命考えながら、ものすごく緊張してやっています。緊張のあまり手にしたコーヒーカップがかちかち音を立てている利用者さんもいます。その一途な一生懸命さに打たれた、というお客さんもいました。お客さんは思いもよらないところで利用者さんの働きぶりを評価してくれるのです。

 本人に悪気はなくても、お客さんが不愉快になるような言葉を口にし、クレームをいただいたこともあります。そういったリスクを抱えながらも、彼らの魅力を存分の発揮できる環境を「勇気を持って」というより「彼らの力と魅力を信頼して」用意する方が、結果的にはお客さんと彼らの素敵な出会いを作り、リピーターを作ることが、この5年でよくわかりました。最近満席で入れない日が時々あるほどにお客さんが来るようになった一番の理由は、食事がおいしいことと並んで、利用者さんの管理されていない接客にあると思います。

 「ぷかぷかに来ると癒やされる」というお客さんの言葉の持っている意味こそ、「ぷかぷか」が街の中にある理由であり、この息苦しい社会を救う手がかりを示していると思います。

 彼らの魅力って、社会を変えるほどの、すごい力を持っているんだ、と今更ながらに思うのです。

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