ぷかぷかは5年前、土、日でも閑散とした商店街にお店を開きました。商売のノウハウもなく、全くのゼロからの出発でした。この閑散とした商店街で、素人の経営するお店に本当にお客さんがつくのだろうかと不安でいっぱいでした。
安心して食べられるおいしいパンを作ること、利用者さんと知り合う場を提供し、彼らの魅力を知ってもらうこと。この二つをひたすらやってきました。
国産小麦、天然酵母、安心できるいい材料でおいしいパンを作り続けました。子どもにも安心して食べさせることができるパンは、少しずつ評判がひろがっていったようでした。
おいしいパンを買いに来て、お店のにぎやかな雰囲気の中で、彼らの魅力に気がつく人も少しずつ増えてきました。おいしいパンといっしょに、何か心あたたまるお土産を買い物袋に入れたのだろうと思います。
地域の方といっしょに毎月のようにパン教室をやり、ここでも彼らの魅力に気がつく人たちがたくさんいました。辻さんのうれしそうな顔は、ここで生まれた関係をそのまま物語っています。
月一回発行している「ぷかぷかしんぶん」には、パンの宣伝だけでなく、利用者さんのちょっとしたエピソードなども載せ、彼らの魅力を伝えました。パン屋には来ないけど、しんぶんだけは楽しみにしているという人がいて、「今月はまだ入ってないよ」と声をかける方もいました。しんぶん配布の途中、団地の中で迷子になった利用者さんがいて、地域の方が「ああ、ぷかぷかさんね」と声をかけ、お店まで、迷子になってますよ、と電話をかけてくれたこともありました。毎月発行し続けた「ぷかぷかしんぶん」は50号を超えました。
ホームページも新しく立ち上げ、「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージを発信し続けました。ぷかぷかのことを語り続けたぷかぷか日記は500本を超え、ホームページのアクセスはもうすぐ80,000に達します。
カフェでは「接客マニュアル」のない接客を利用者さんがやっているのですが、そのあたたかで一生懸命な接客がいい、とお客さんが少しずつ増えてきました。みんなが楽しそうに働いている姿も、お客さんにとってはカフェの大きな魅力になったようです。みなさんの笑顔を見ると、こちらも癒やされるんです、とおっしゃるお客さんが何人もいました。
昨年秋から始めたFacebookページでは一枚の写真と短い文章で、毎日ぷかぷかで起こる小さな物語を発信し続けてきました。ぷかぷかの今をリアルタイムで伝えるすばらしいツールとなっています。ほんの20くらいのアクセスから始まって、今は1週間に1500人から多い時は3000人くらいアクセスしてきます。
そうやってぷかぷかは少しずつ「お客さん」あるいは「ファン」を増やしてきました。時々お店に来る、といった程度ではなく、「コアなファン」がたくさんいるという話も聞きました。うれしい限りです。
今年2月に「アート屋わんど」がオープンした時は、そのオープニングイベントにびっくりするくらいのお客さんがやってきました。
社会から邪魔者扱いされてきた障がいのある人たちの働く場に、これだけの人たちが集まるってすごいことだと思います。ここには社会の希望があります。
全く人のいなかった広場に、こんなにも人を集めることができたこと。これがぷかぷかが5年かけてつくってきた大切な人のつながりです。