ぷかぷか日記

5年たちましたーその1

 この4月で、ぷかぷかが誕生して5年になります。お店を始める前は教員をやっていたので、経営に関しては全くの素人。よく持ったよな、というのが素直な思い。たくさんの人たちの支えがあってこその5年でした。

 ぷかぷかが始まった頃、かわいい1年生だった子どもが、たくましい体の5年生になりました。キラキラした目の輝きは、世界への好奇心がむき出しになったようで、この5年のすばらしい成長がまぶしいくらいです。

 ぷかぷかもそんな成長があったのだろうかと思います。確かに規模は大きくなりました。パン屋とカフェ半分(開店当時、半分は利用者さんたちの食堂兼休憩室だったため、お客さんのテーブルは二つしかありませんでした)でスタートし、今はフルスペースのカフェ、お惣菜、アートが加わって4店舗。利用者さんは10人からスタートし、今は35人になりました。スタッフも7名から始まって今は30名近くになりました。規模が大きくなったことも成長の一つではあるのですが、そういう面だけの成長を言っていても、何かむなしい気がします。5年になった男の子の、あのキラキラした目に匹敵するような成長が、ぷかぷかにもあったのだろうか、ということです。

 ハードな面だけでなく、ソフトな面での成長。『新しい価値』といったものをどれだけ創り出せたか、『未来に希望を抱くことのできる新しい物語』をどれだけ創り出せたか、といった面での評価です。

 

 ぷかぷかにはほかの福祉施設からも、よく見学の方がいらっしゃいます。決まって言われるのが

「ここはみんな明るいですね。」

「みんな楽しそうに働いていますね」

という言葉です。

 福祉施設の多くは「軽作業」と言われる、ボールペンの組み立てとか、割り箸の袋詰めとか、電機部品の組み立てとかをやっています。

「いつ行っても同じ仕事をやっていて、いつ行っても暗い雰囲気で…」

 と、あちこちの福祉施設を見て歩いている方がおっしゃっていました。

 ぷかぷかの明るい雰囲気は

「ぷかぷかを明るくしよう」

とと呼びかけてできたわけではありません。やはり仕事がおもしろいこと、その仕事が利用者さんの日々を支え、人生を支えるほどのものであること、といったことがあって、利用者さんの笑顔が生まれ、ぷかぷかの明るさが生まれます。

 では、仕事のおもしろさはどこから生まれるのでしょう。

 去年、朝日新聞が「ソーシャルビジネス」の特集記事を作るために取材に来たことがあります。最初に聞かれたのは

「どうしてビジネスで仕事をやるのですか?」

ということでした。ビジネスで仕事をやるというのは、街の中できちんと勝負できるもの、ほかのお店に負けないものを作ることだと思います。売れても売れなくてもどっちでもいい、というようなものではなく、ちゃんと売れるものを作る、それがビジネスだと思います。そういう指向を持つことでいいものができるのだと思います。

 ぷかぷかを始める時、

「障がいのある人たちが作ったものだから買ってあげる」

パンではなく、

「おいしいから買う」

パンを作ろうと思っていました。

 「障がいのある人たちが作ったものだから買ってあげる」とか「障がいのある人たちが作ったものだから買ってもらって当然」とお互いが思い合うような関係の中では、絶対においしいもの、価値あるものは生まれないと思っていました。

 街の中でちゃんと勝負できるものを作る、という指向は、仕事に緊張感を生みます。その緊張感こそが、仕事のおもしろさを生むのだと思います。

 NPO法人ぷかぷかの理事会で、仕事の現場の見学会をやったことがあります。多くの理事が利用者さんたちの真剣な仕事ぶりにびっくりされていました。この真剣な仕事ぶりも、

「真剣に仕事しなさい」

といってやらせているのではなく、いいものを作っていこう、という思いの中で、自然にできたものでした。

 いいものができると、当然のように売り上げが伸びます。売り上げが伸びれば、それを作る人たちのモチベーションは上がります。みんなの笑顔が増えます。その笑顔を見てお客さんが増えます。その好循環をぷかぷかは作ってきました。

 

 その好循環は、地域社会でのぷかぷかの評価、障がいのある人たちへの目線も変えていきました。

 NPO法人ぷかぷかは、障がいのある人たちの社会的な生きにくさを少しでも解消しよう、という目的で作りました。街の中に彼らの働くお店を作ったのも、街の人たちと彼らが知り合う機会、出会う機会を毎日の生活の中で作っていこうと思ったからです。この5年で、ずいぶんたくさんの方が彼らと知り合い、出会うことができたと思います。

 ビジネスで事業を展開することで、お店に明るさをもたらしました。いつ来てもみんなが明るい顔をして働いていること。これはすばらしい価値を街の中に生み出したと思います。

 みんなが明るい顔をして働いている姿を見ることは、とても気持ちのいいことです。「障害」というマイナスのイメージを持った彼らが、街の人たちをいい気持ちにさせるなんて、考えただけで楽しくなります。

 

 5年たって気がついたことを少しずつ書いていきたいと思っています。いろいろご意見いただけるとうれしいです。

 

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