昨日はエミちゃんの29歳の誕生日でした。朝の会で小さな花束を贈って、みんなでお祝いしました。29歳の抱負は?と聞くと、毎日元気に通ってくることです、と恥ずかしそうにいいました。
エミちゃんは発作があるので、毎日行き帰り介護する人がついています。ところがこのところ発作がほとんどないので、先週から朝はひとりで電車、バスを使って通勤しています、と昨日、本人から聞きました。いつ発作があるかわからないエミちゃんにとって、ひとりで通勤するのはほんとうに大冒険に近いものではないかと思います。
発作で倒れたときのエミちゃんを何度も見ているので、そのリスクを抱えたままひとりで電車に乗ったりバスに乗ったりするのは、私だったら多分怖くてできないだろうと思います。それを考えると、ひとりで「ぷかぷか」に来ると決めたエミちゃんの気持ちは、ほんとうにすごいなと思うのです。
そのくらいの気持ちで「ぷかぷか」に来てくれてるんだ、とうれしくなりました。
2年ほど前の介護認定調査の時、最近どうですか?の質問に、仕事がおもしろくて
「以前はいつもうつむいていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」
と応えたエミちゃんですが、そのまっすぐに前を向く気持ちが、ひとりでぷかぷかに来ようと決めたエミちゃんを支えているんだろうと思います。
誰にも頼らず、ひとりで来る、と決めたエミちゃんの決意には、ただ単にぷかぷかにひとりで来る、というだけでなく、これからの人生、どう生きるのか、という決意が見える気がするのです。
いつも誰かの手助けに頼る人生は、いくら頑張っても手助けの範囲でとどまってしまいます。ひょっとしたらエミちゃんは、そこを突破しようとしたのではないかと思いました。
5年前、ぷかぷかを立ち上げる前、エミちゃんは作業所でのんびり仕事をしていました。好きな刺繍をしたり、織物をしたりで、なんの不満もなかったはずですが、20代半ばにさしかかり、
「このままのんびりした人生でいいのかな」
と考えていたようです。その頃やっていた陶芸教室で、何度かそんな話を聞きました。そしていよいよぷかぷかを立ち上げる直前、
「なんか今のままじゃぁさびしい気がする」
と、思い切ってその作業所をやめ、ぷかぷかへ来ることにしたのでした。ただ単に仕事場を変わるのではなく、新しい人生に挑戦するような、大変な決意だったと思います。
いろいろな場面で介護が必要な毎日にありながら、そののんびりした毎日に、こんな人生でいいのかな、と思った、というのですから、エミちゃんという人は、見かけによらず、燃え上がるような思いが渦巻いているのではないかと思いました。
で、ぷかぷかへ来て、仕事のおもしろさに目覚め、
「まっすぐに前を向いて生きる」
ような人生の中で、介護の度合いがどんどん減って、人生に自信がついたのだと思います。そんな中で
「もう、人に頼らず、ひとりでぷかぷかに行こう!」
と決意したのではないかと思います。
昨日みんなの前でさらっと語った
「毎日元気に通ってくることです」
という29歳の抱負には、平凡な言葉でありながら、エミちゃんの密かな決意が込められていたんだと思います。
その熱い決意にぷかぷかは本気で応えねば、と思ったりしたのでした。