ぷかぷかを立ち上げたとき、講師を呼んで接客の勉強をみんなでやったことがあります。普通のお店ならどこでもやっている接客でしたが、それを障がいのある人たちがやるのは、かなりむつかしい気がしました。何よりも、なんかおもしろくないというか、彼らの、せっかくの持ち味が生かせない気がしました。彼らの持ち味が生かせなければ、彼らが接客する意味がありません。
彼らの持ち味を生かす、ということは、こちらがとやかく言わずに、彼らに任す、ということです。言い換えれば「管理しない」と言うことです。
前回のブログで紹介した「おいしいかい!?」なんて言う言葉も、管理していない環境だからこそ、ぽろっと出てきたのだと思います。普通はお客さんに向かってこんな言葉は使いません。
でも、そのとき、厨房にいたトシヤンはお客さんがあんまりおいしそうに食べてるので、なんだかうれしくなって、ついカーテンをシャッとあけ、ニカーッと笑いながら
「おいしいかい!?」
なんて言ったんだろうと思います。聞いたお客さんも、
「え?!」
とか思いながらも、トシヤンの投げかけた言葉の、なんとも言えないおかしさ、あたたかさに、クスッとしながら、負けずに大きな声で
「おいしいです!」
って、応えたんだろうと思います。トシヤンは、そうだろうといわんばかりに
「フフ〜ン」
と笑い、カーテンを閉めたようです。
その余韻の中で、お客さんは
「また来よう」
って思ったというのですから、おもしろいですね。この一瞬のやりとりで、ぷかぷかのウィルスに感染してしまったとお客さんは言ってました。
こういう思ってもみない、全く想定外の、楽しい、あたたかな出会いは、管理された空間からは絶対に生まれません。
もちろんこの一瞬のやりとりがいつもうまくいくとは限りません。事実カフェのお客さんで利用者さんの言葉に不愉快な思いをしてクレームをつけた方もいます。でも、だからやはり管理が必要だ、というのではなく、そういったリスクを抱え込みながらも,なお、彼らの持ち味を生かすお店、彼らの持ち味にふれ、お客さんの心がキュ〜ンとあたたまるようなお店にしたいと思うのです。
福祉事業所が運営するお店に行ったお客さんが、
「ぷかぷかに来ると、なんだかホッとする」
とおっしゃってましたが、管理されたお店は、お客さんにとっても息苦しいのだと思います。
「なんだかホッとする」
という言葉こそ大事にしたいと思うのです。そういう空間を彼らは自然に作り出してくれます。
そのことをどこまで信頼し抜くか、だと思います。