ぷかぷか日記

参加者みんなが世界と新しく出会い直すような

 昨日ワークショップの企画書をアップしたら、利用者さんの成長を書き加えた方がいいのではないか、という意見がありました。

 ワークショップは物事についてひとりで考えるのではなく、みんなで考えます。頭だけで考えるのではなく、体を使って考えます。言葉だけをやりとりするのではなく、形のある共同作業を通して考えていきます。そうしてみんなで新しい世界を切り開いていきます。

 昔、京都で平和をテーマにワークショップをやったことがあります。あの当時、湾岸戦争のさなかで、地上戦が始まるのではないか、という緊張感の中でのワークショップでした。

 まずは戦争について、それぞれ短い詩を書きました。その短い詩を一人ひとり思いを込めて朗読しました。地上戦が始まる、という緊張感故に、平和への思いがあふれるような詩が集まり、もうそれだけでみんな感動してしまいました。平和へのそれぞれの思いをこういう形で共有しました。

 それぞれの詩を組み合わせ、「集団詩」を作ります。これは単なる言葉の切り貼りではなく、それぞれの熱い思いの切り貼りです。この作業がものすごく大変で、詩の言葉を並べ替えしながら、どうすればみんなの思いを表現できるかを徹底して確かめ合います。この作業が大変な分、できあがった集団詩は、個人の詩の何倍も力を持つことになります。

 そうやって作り上げた集団詩をみんなで朗読します。声に出して読み始めたとたん、詩がむくむくと生き始め、集団詩の持つ力を体で感じることができます。

 立ったまま朗読することから始め、歩きながら読んだり、座って読んだり、誰かにもたれかかりながら読んだり、様々な動きをつけながら読んでいきます。動きながら言葉にメリハリをつけていきます。誰に向かって、どんなふうに言葉を発するのか、体が動くと、言葉がどんなふうに変わるのか、そんなことを体で確かめながらワークショップは進行していきます。

 こんなふうにして、自然に芝居ができあがっていきます。場のテンションがぐんぐん上がってきます。ここまでくると、もう進行役の手を離れ、ワークショップの場のエネルギーが参加者の背中をぐいぐい押します。

 京都でやったときは、全く予定になかった大きな舞台に立ってしまい、芝居をやる側も見る側も涙、涙の感動的な舞台になりました。舞台に立った人たちの熱気はまだ収まらず、誰かが「街頭でやろう!」といいだし、みんなで連休でごった返す京都駅まで押しかけ、ゲリラ的に駅前の広場で芝居をやってしまったのでした。

 

 こうやってワークショップの参加者は自分の世界を、想像もできないような形で広げていきます。ワークショップの始まる前、誰も京都駅前で芝居をやるなんて考えていませんでした。参加者のほとんどは芝居は初めてという人たちでした。それが三日間のワークショップのあと、大きな舞台に立ち、更には京都駅前に広場で芝居をやってしまったのです。「成長」などというおとなしい言葉では語りきれない、もっとダイナミックな変わりようが参加者みんなの中にあったのだろうと思うのです。

 

 参加者みんなが世界と新しく出会い直すような、そんな劇的な変化がワークショップにはあります。

 利用者さんの成長、といったことをはるかに超えた、もっと広い世界の、もっと大きな変化をワークショップは考えています。

 

 

 

 

 

 

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