パン屋を始める前、もうけが出たら、地域の子どもたちにオペラシアターこんにゃく座の『ロはロボットのロ』という楽しいオペラをプレゼントしたいなぁ,と思っていました。ただこれはもう15年ほど前の作品で、再演する予定はなく、夢のままで終わってしまうんだろうと思っていました。ところが9月にこんにゃく座のオペラを見に行ったときに、来年の5月から7月にかけて再演するという話を聞き、この機会を逃したら絶対にできないと思い、夢の実現に向けて動くことにしました。
ただ肝心なパン屋は儲かっているにはほど遠い状態なので、私が個人で動くしかありません。『ロはロボットのロ』は1ステージ80万円です。私がそのお金を払えばそのステージは実現します。でも、それではおもしろくないと思うのです。
「子どもたちにオペラをプレゼントする」という企画には夢があります。何かモノをプレゼントするよりも、はるかに大きな夢です。その大きな夢を、大きいが故に,一人じゃなくて、たくさんの人たちと楽しみたいと思うのです。
「子どもたちにオペラをプレゼントする」という夢のために、たくさんの人たちが、いろんな思いを込めて動く。これって、なんか、素敵だなと思うのです。そうやってみんなが夢に向かって動くことで、地域社会は豊かになっていくんだと思います。
何よりもそういう突拍子もないことを思いつくパン屋が街の中にあると、それだけで街が楽しくなると思うのです。そしてそういう楽しいパン屋を人は応援したくなります。
つい先日、パン屋のそばにある保育園の園長先生がパンを買いに来たとき、「子どもたちにオペラをプレゼントしたいなって思ってるんだけど…」という話をちらっとしたら、「いや〜、いいわね〜、夢のあるすばらしい企画だわ、やろうやろう」とえらい乗り気で、夢を共有できるこんな人が何人か集まれば、この企画はきっとうまく行くと思うのです。夢を共有する新しい関係がまた広がっていきそうです。