10年ほど前、養護学校で担任していたヤマくんがふらっとお店にやってきました。パン屋で働いています。一般就労で、最低賃金をもらっています。貯金が300万円もあるそうで、びっくりしました。
そんなに貯めて、何に使うの?と聞くと、イタリアに行くんだそうです。サッカーを見に行くのかと思ったら、ミケランジェロの絵を見に行くんだそうで、すごいなと思いました。
でもイタリア行くのに300万円は使わないし、残りはどうするの?と聞いても、具体的なプランはないようでした。ヤマ君の友達は老後のために1000万円近く貯めたという話をしていましたが、ヤマ君はまだ29歳。老後のために貯めるのはまだ早いんじゃないの、若いうちにやりたいことのために使った方がいいと思うよ、と言ったのですが、どこまで伝わったのでしょう。
パンの成形の仕事をやっているそうで、仕事はおもしろいと言っていましたが、休みがなかなか取れなくて、夏休みも、年末年始の休みもないそうで、そのあたりがとても辛そうでした。職場に友達もいなくて、休みの日も一人で打ちっ放しのゴルフ場に行くくらいで、さほどおもしろくもなさそうでした。寂しい人生やってるんだなと思いました。
ぷかぷかでは8月末にみんなで旅行に行く話をしたら、とてもうらやましがっていました。職場のみんなと一緒に旅行に行くなんて、信じられない、といった感じでした。
障がいのある人が一般就労して働けることはすばらしいことだと思います。でも、ヤマ君の話を聞き、寂しそうな顔を見てると、それが本当にすばらしいことなのかどうか、わからなくなってきます。