ぷかぷか日記

スナックに行ってジュース飲むんだよ

 長野県は小諸にある「おむすび長屋」の田中さんがお店に見えました。

 おむすび長屋は30年ほど前、小諸の山間にある茅葺きの廃屋を借りて、障がいのある人たちと生活を共にしながら味噌作りを始めました。今のように福祉の制度も整わない中でのスタートだったので、大変な試みだったと思います。たまたま新聞で紹介され、訪ねていったのがおつきあいの始まりでした。

 訪ねていった日にボーナスが出たようで、こういちろうさんというおじさんが

「ボーナス出たんだよ」

とにこにこ顔でいいました。

「何に使うんですか?」

「スナックに行ってジュース飲むんだよ」

 40歳くらいのおじさんが、そんなふうにうれしそうに言い、その純な心に感動したことを未だに覚えています。

 味噌はお金になるまで1年くらいかかります。バイトで食いつなぎながら「おむすび長屋」を維持できたのは、やはりあの年代の志の深さだったかと思います。でも、若い人たちに引き継ぐに当たって、それなりの生活の保障がないとまずいだろうと、10年ほど前、社会福祉法人になりました。田中さんは今年、その理事長の役も降り、すべて次の世代に引き継ぎました。今日はそのあいさつ回りだったようです。

 田中さんのあの味が「おむすび長屋」からなくなることは、とても寂しいことですが、新しい「おむすび長屋」に田中さんを超える新しい魅力をぜひ創り出していってほしいと思います。

 

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