厨房機器メーカーの営業マンと打ち合わせ中、営業マンが
「あの〜、この人、なんかすごいこと言ってますね」
と、パン屋のレジの側でずっとべちゃくちゃ一人でしゃべっていたtujiさんをさしていいました。
「よ〜く聞いてると、世界中の都市の名前をいってるじゃないですか。私なんかほとんど知らない都市の名前ですよ。どこでこんな勉強したんですか?」
「tujiさん、どこで勉強したんですか?」
「カレンダー」
「カレンダー? カレンダーで、どうやって勉強したんですか?」
「カレンダーの隅に書いてあった」
「へ〜、それをどうやって覚えたんですか?」
「この人は記憶力が普通じゃないんですよ。年代別に紅白歌合戦に出た歌手の名前を全部覚えてたりします。」
「え〜っ!どうしてそんなことができるんですか?」
「だから、記憶力が普通じゃないんです。今、確か28歳ですが、1年ほど前のワークショップで、小学校2年生で習った「ふきのとう」というお話を、テキストを見ないで正確に朗読しました。」
「20年ほど前に習った教科書ですか?」
「そうです。しかも芝居の中で使ったので、途中で何度も止めたりしたのですが、途中で止めても、正確にまた始めることができました。普通、こういうのはひとまとまりで覚えているので、途中で止めると、その先が思い出せなくなってしまうのですが、この人は何度止めても正確に“再生”できました。」
「暗算もすごいです。お客さんがトレイにのせてきたパンをちらちらっと見てさっと合計をいいます。私が計算機でポチポチと計算するよりも5倍は速いです。しかも正確です。」
「1ヶ月のスケジュールも全部頭に入っていて、私みたいに手帳で確認しなくても、すらすら言えます。営業マンの秘書で使えますよ。どうですか?ちょっと考えてみませんか?」
「そうですねぇ、課長と相談してみますよ」
なんていながら帰って行きました。
昼休み、給食食べながらtujiさんに
「厨房機器メーカーの営業マンがtujiさんのすばらしい力に感動して、自分の助手にしようかなっていってたよ」
「え?営業マンやるの?」
「そう、計算とかスケジュール管理とか、tujiさんの力を生かせると思うよ。給料もぷかぷかよりずっといいと思うし、どうですか?」
「営業マンか…」
と、しばらく考えていましたが、
「えーと、営業マン、やっぱりいやだ、ぷかぷかがいい!」
といいました。うれしいこと言ってくれます。