「ぷかぷか1年目で、経営が苦しくなったとき、どうしてやめようと思わなかったんですか?」
と、昨日陶芸をやりに来た知人に突然聞かれ、どうしてだったかなぁ、とあらためて考えました。
「まだ、なんとかなる」「もうちょっとだけがんばってみよう」
とかいろいろ考えながら、何とかがんばっていたような気がするのですが、昔、アラスカのマッキンリーに登ったときのことをふと思い出しました。
頂上直下(標高6000メートルくらい)、すさまじい地吹雪で、全く前へ進めない状況でした。3人で非常用テントをひっかぶり、がたがた震えながら、先へ進むか、戻るか、考えていました。がたがた震えていたのは、寒さだけでなく(日中でマイナス30度くらい)、精神的に追い込まれていたことが大きかったと思います。そのときの状況は自分の山の経験をはるかに超えていて、これ以上先へ進むことは、どうなってしまうかわからない怖さがありました。といってここで引き返してしまうと、ここまで来るために費やした膨大な準備とエネルギーを考えると、たぶん二度と来られないだろうこともわかっていました。どっちを取るか、3人とも黙りこくったまま長い時間が過ぎました。
誰からともなく
「行こう!」
とひとこと声がかかり、
「よし、行こう!」
と、3人で少し収まった地吹雪の中、高ぶった気持ちで出発したのを覚えています。そこから更に2時間ほど登り、1975年8月2日の午後8時、マッキンリーの頂上(標高6190メートル)に立ったのでした。午後8時、白夜のアラスカの空は凍り付いたような青空が広がっていました。
こんな話と比べてもしょうがないのですが、一度始めたことを途中でやめることは、どんなことであっても、ものすごく大変なことだと思います。中身の濃いものであればあるほど。
やめること自体は簡単です。でも、そこに至るまでに費やした膨大な準備やエネルギーを考えると、二度と同じことはできないし、そう簡単にものごとをやめることはできないと思います。何よりも準備がスタートした頃の爆発的なエネルギーや勢いは、そうそう生まれてくるものではありません。
そういったことを考えると、経営的に苦しい状況というのは、まだまだなんとか超えられる気がするのです。
ぷかぷかは幸い、今順調ですが、あのときの苦しい状況を何とか超えることができたからだと思います。