「ねぇ、明日何の日か知ってますか?」
と、突然女性から聞かれました。慌ててカレンダーを見て
「えーと、あしたは3月14日でしたっけ。そうですね、あしたはマユさんとの面談の日ですね」
なんだかがっかりしたような感じが、集まっていた女性たちから、わぁ〜んと伝わってきました。
「あの、もっと大きなことですよ」
「大きなこと?」
カレンダーのどこにもその大きなことが書いてなくて、あれ、何か大事なことがあったかなぁ、と思っていると
「2月14日に渡したでしょ!」
「2月14日?」
ああ、そういえば女性陣で作ったブラウニーをもらったんだと、ようやく
「明日は何の日ですか?」
の意味を悟ったのでした。
すぐそばにいた男性のメンバーさんに、
「ねぇ、聞いた?、どうする?ほら、怖い目で見つめられてるよ」
とかいっても、全く意に介さない様子。周りに助けてくれる男性は誰もいません。
クッキーのレシピ本があったので、
「よし、明日楽しみにしててください」
と、大きなこと言ってしまいました。満塁逆転ホームランを狙おうと、その本を鞄に入れ、家で作戦を練ることにしたのでした。
ところが、近々始まる「おひさまの台所」の図面の打ち合わせが夜の8時過ぎまでかかり、とても家で作戦練るような時間はありません。
そのときに来ていた厨房機器メーカーの営業マンが、
「確定申告は15日までですよ、明日、明後日はめちゃ込みです。私は朝から会社休んでいきます」
なんて話をしていて、そのことが何となく頭に残っていました。
帰りの車の中で、マネージャーに
「明日、銀行に行ったあと、税務署に行きますのでよろしく」
といったあと、営業マンの言葉が頭に浮かび、税務署がめちゃ込みなら、午後のクッキーを作る時間に帰って来られないかも、と気づき、
「明日は昼までにかえって来れないかもしれないなぁ」
「クッキーはどうするんですか?」
「そりゃもう、そのときはマネージャーが作るしかないですよ」
「え?私が?」
「そう、それしかないです。でも、平気、平気、このレシピ本通りやれば、絶対に大丈夫。給食食べたあと、男連中集めてシャカシャカっとつくれば、1時間もかからないし、もし失敗しても、それはそれ、こういうことは失敗した方が楽しいって。失敗してもクッキーはクッキー、こういう感じの新感覚のクッキーなんですっていえばいい。要は男もがんばった、という姿勢を示すことが肝心。」
「材料は買ってあるんですか?」
「いや、さっき思いついたばかりだから、何も買ってないよ。薄力粉、菜種油、塩、メープルシロップがあればいいから、メープルシロップ以外はパン屋で集められるし、メープルシロップはこれから帰り道にスーパーで探して」
と、レシピ本を渡して別れたのでした。
たぶん、マネージャーは明日、悪戦苦闘します。でも、悪戦苦闘の中で、きっとすばらしい成長があります。
「明日何の日か知ってますか?」
の一言から始まって、最終的に、おそらくクッキーなんて作ったこともないマネージャーがそれを引き受けることになるなんて、神様も予想しなかったに違いありません。しかも休みの日に趣味でやるのではなく、女性陣が待っている目の前で、いきなりぶっつけ本番の勝負に挑むのです。こんなに緊張感のあるわくわくするイベントは滅多にありません。
仕事は今、ものすごく忙しいです。その忙しさをかいくぐって、こんな思いもよらない、わくわくするようなことができるのが「ぷかぷか」のいいところです。だから「ぷかぷか」は楽しいのだと思います。