福祉起業家という言葉があります。自分ではそんなふうには思っていませんが、ぷかぷかを始める前、福祉起業家経営塾を受講したとき、その概念を聞きながら、これって自分のことじゃん、って思いました。
NPO法人申請のための予算案を作った頃から、どうも話す相手を説得できてないなという気がしていました。
計画が話だけで終わる段階はともかく、お金という具体的なものがからんでくる段階になると、情熱や思いだけではなかなか前へ進めません。いろんな人と話す中で、そういうことがだんだん見えてきたのです。
パン屋は商売です。収支が合うかどうかが一番大事なところなのに、そこの計算が私にはさっぱりできなかったのです。そこをしっかり計算し、相手を説得しないと前へ進めないところまで来ていました。
その頃、たまたま福祉ベンチャーパートナーズから「福祉起業家経営塾」の案内が来ました。
福祉ベンチャーパートナーズとは障がい者の自立支援を目指す福祉施設の経営コンサルティング会社です。障がい者の働く場を創りたいという方のために「福祉起業家経営塾」を主催していました。経営塾ではビジネスの種探しから始まり、ビジネスプランの作り方やマーケティング、経営戦略の考え方などの研修をやります。更に「何があっても絶対に諦めない」という経営者の心づくりという側面も非常に大切にしています。
そのパンフレットの文面には「福祉起業ビジネスプラン作成のポイント」「福祉起業のマーケティング戦略」「誰に」「何を」「どのように」提供するのか、といった言葉が並んでいました。それを見て「ああ、これこれ、こういうことが今必要なんだ」と、なんだか救われたような気持ちになりました。
「福祉起業家塾」は4日間のセミナーで、最終的に自分のビジネスプランをしっかり作る講座です。しっかりしたビジネスプランができれば、どこへ行っても計画をきちんと説明できます。
なによりも「カフェベーカリーぷかぷか」が街のパン屋としてちゃんとやっていけるかどうかが具体的に見えてきます。
障がいのあるメンバーさんには障害者年金(*障害者手帳を持った方が受けられる年金で、月65,000円程度)とあわせればグループホーム(*一人では自立生活できない障害者の方が、支援者の手を借りながら集団で生活している施設)で自立生活が送れるだけの給料(5万円程度)を払いたいと思っていました。
スタッフにも生活に困らないだけの給料(20〜30万円くらい)はきちんと払いたいと思いました。
プランを作ることができれば、それを実現させるためには何をどうすればいいのかも具体的に見えてきます。
そんなことを期待しながら、2009年3月、私は4日間の講座を受けました。
養護学校で働く私にとって、ビジネスは全く未知の分野。どれもとても新鮮な内容でしたが、一番大きな発見は「福祉起業家」の概念でした。
福祉起業家とは、やりたいからやるもの。一つの自己実現であり、それは「福祉」とは全く発想が違う、といいます。「やってあげる」とか「お世話する」とか、まして「指導する」といったことでありません。
・ 一緒にやる、一緒に働くということ。
・ そのことが好きで好きでしょうがないこと。
・ ボランティア活動ではなく、経済活動であること。
・ そこで働く障がいのある人たちはもちろん、自分自身も幸せになるということ。
どれもこれも納得できることでした。
「カフェベーカリーぷかぷか」は私自身の漠然とした思いでスタートし、イメージを作ってきましたが、福祉起業家とは何か、の話を聞いて、「ぷかぷかでやろうとしていることは、まさにこれだ!」と思いました。