養護学校の進路担当者が見学に来ました。
養護学校で働いていた頃、校内実習というのがあって、大概はペットボトルのふたを数えたり、教材のセットを作ったり、の単純作業をやっていました。単純作業なので、大概の人は2,3日やると飽きてしまいます。飽きてもこれは仕事なんだからちゃんとやりなさい、などといっていましたが、今から思うとずいぶん無茶なことをいっていたなと思います。
おもしろくもない仕事を、仕事だからちゃんとやりなさい、というのは考えてみれば、かなり無理があります。恥ずかしい話、当時は私自身が仕事というのはおもしろくなくてもやるものだと思っていました。それが仕事というものだと。
それは違う!と教えてくれたのは「ぷかぷか」の利用者さんでした。「ぷかぷか」を始めて2年くらいたった頃、ミイさんの介護認定調査がありました。ケースワーカーさんが、いろいろ質問し、どの程度の介護が必要か調べます。4年前は何やるにも介護が必要だったそうですが、今回の調査では自分でできることがケースワーカーさんもびっくりするくらい増えていました。ミイさんの言葉を借りると
「以前はいつもうつむいて生きていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」
ミイさんはクッキー作りを任されています。仕事を任されることは、仕事に対する責任があるということで、その責任故に、仕事を無事終えたときはすばらしい達成感があります。達成感は更にやる気を起こします。どんどん自分で仕事をこなすようになります。自分でできることが自然に増え、介護の度合いが自然に減ったということでしょう。
「ぷかぷか」に来る前は作業所にいたので、仕事に緊張感とか責任といったものもなく、のんびりはしていても、彼女にとっては日々の充実感もなく、うつむいて生きるような毎日だったようです。
「今はまっすぐ前を向いて生きています」の言葉には、本当にびっくりしてしまいました。目が覚めた、といってもいいくらいでした。仕事が楽しくて、毎日が充実すると、こんな素敵な言葉が出てくるのか、と感動してしまいました。
「ぷかぷか」では毎日帰りの会で「いい一日でしたか?」と聞きます。仕事に達成感があれば、いい一日になりますが、仕事がつまらないと、つまらない一日になってしまいます。かけがえのない今日という一日を「いい一日だったね」ってお互い言い合って過ごしたいと思うのです。
そんな話を見学に来た進路担当者に話しました。私自身のかつての貧しい仕事観も話しました。つまらない仕事でも、仕事は我慢してやるものだ、という仕事観で仕事を体験し、仕事ってこういうものだ、と思い込んでしまうとしたら、養護学校を卒業して社会に出て行くとき、仕事に対して何の期待も持てなくて、寂しい社会人になってしまいます。ですから養護学校でやる実習は、生徒が本当に楽しいと思える仕事をやってほしい、仕事って楽しいんだっていう発見をして欲しい、そして卒業して社会に出て行くとき、さぁこれから仕事だ!ってわくわくするような気持ちで飛び込んでいって欲しい、といったことを話しました。