ぷかぷか日記

旅行

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 土、日で山梨方面に一泊旅行に行ってきました。

 ツンさんは映画を作るためにカメラをしょっちゅう回していました(ツンさんについてはホームページ「ぷかぷかパン」の「ツンさんの映画」のタグをクリックすると詳しく載っています)。昨年の旅行もカメラを回していたので、完成したときどんな映画かとわくわくしながら見たのですが、暗い感じの画面が延々続き、音楽もそれに合った音楽で、利用者さんには「何、この暗い映画は…」ときわめて不評でした。

 旅行の記録映画であれば、普通はみんなの楽しかった思い出がいっぱい詰まった映画、というイメージだと思うのですが、ツンさんの作った映画は、そんな楽しい場面はひとつもありませんでした。

 といってつまらない映画だったかというと、そうでもなく、「旅行の記録映画」として見なければ、映像の切り取り方といい、音楽の使い方といい、とても心地のいい映画だったと思うのです。お母さんはツンさんの心象風景だと思ってみて下さいとおっしゃっていました。

 ツンさんは重症のうつ病を抱えています。ぷかぷかに来る前は何年も家に引きこもっていました。いろいろ思うことはあっても、体と心が思うように動かず、調子が悪いときは壁に頭をがんがんぶつけていたといいます。お母さんはただ背中をさすってやることしかできなかったとおっしゃっていました。

 たまたまお父さんがやっているブルーベリーの畑に利用者さんと一緒にブルーベリー狩りに行ったとき、ツンさんのことを聞き、どうしていいかわからなくて困っているという話だったので

 「じゃあ、ぷかぷかに来てみたら」

とさそったのがきっかけで、以来週3日、ぷかぷかで働くようになりました。一日2時間ぐらいから始まって、少しずつ働く時間を延ばしていきました。

 あるときみんなで「借りぐらしのアリエッティ」というアニメを見たことがありました。その時、ツンさん曰く

 「これはカメラアングルがいいですね」

 アニメでカメラアングルがいい、というのは、そういうアングルで撮っているように絵を描いているわけですが、そのカメラアングルがいい、とぼそんと言ったのでした。

 その感想を皮切りに、レイアウトがすばらしいとか、コマ数がどうとか、振り向いたときの絵はどうなるとか、夢中で語り出したのでした。映像オタクという感じがしないでもなかったのですが、ひょっとしたら天才かも知れないし、ものは試しとアマゾンで一番安いビデオカメラを買い、一週間後にあった運動会を撮ってもらったのでした。

 初めてビデオカメラを持った、といっていましたので、カメラの構え方はいかにも素人、という感じで、これはあまり期待できないなと思っていました。

 ところが2,3日して、できました、といって持ってきた映像を見てびっくり。どうしようもなくだらだらした運動会が、コンパクトな映画としてまとまっていたのでした。続けて3本くらい作ったのですが、どれもこれもすばらしいできで、知り合いの映画監督に見せたところ、「これは天才の発見だ」と大絶賛。区役所新庁舎のお披露目という退屈きわまりないイベントの記録に吉田拓郎の歌をかぶせ、その時はツンさんの思いがビリビリ伝わってきて、涙が流れてしまったこともありました。

  私は今日まで生きてみました

  そして今私は思っています

  明日からもこうして生きて行くだろうと

 自分の思いを表現する方法はこれだ!というツンさんの宣言のようなものを感じたのでした。

 知り合いの映画監督の紹介で、東京であった「メイシネマ映画祭」で招待作品として上映されたこともありました。見る人を楽しませようとか、いい映画を作ろう、といった思いが全くなく、ただただ自分の思うままに撮っている、という点が評価された映画祭でした。

 だから去年の旅行の記録映画も、みんなを楽しませるつもりは全くなく、自分の思うままに撮った、ということがよくわかる映画だったのです。

 今年もだからみんなのいい笑顔とかではなく、空や部屋の間仕切りをしきりに撮っていたので、どんな映画に仕上がるのか、今からものすごく楽しみにしています。

 

 

 

 

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