福祉の世界を長年歩いてきた人が「毎日同じことの繰り返しの単純作業では人は成長しないんだよね」といっていました。全く同感です。自分がそういう仕事をすることを、ちょっとでも想像すれば、すぐに納得できます。
にもかかわらず、知的障がいの人は単純作業が向いている、と昔からよく言われます。でも、ほんとうにそうか?と思います。単純作業の繰り返しは、あまり頭を使わない、だから知的障がいの人にはこういう仕事があっている、といわれるのだろうと思います。でも自分でそういう仕事をやってみると、同じことの繰り返しはすぐに飽きてしまうし、それを続けることはとても辛い毎日になります。そういう気持ちは知的障がいの人たちも同じだろうと思います。ただ彼らが黙っているだけではないかと思うのです。ボールペンの組み立て、割り箸の袋入れ等は福祉事業所でよくやっている仕事ですが、少し想像力を働かせれば、毎日そういった仕事を続けるつまらなさはすぐにわかります。毎日毎日何の変化もありません。変化がなければ面白くも何ともないし、自分の成長もありません。
彼らだっておもしろい仕事を提供すれば、毎日が楽しくなるし、充実した時間を毎日過ごすことができます。ぷかぷかで働く知的障がいの人たちに活気があるのは,そういう毎日を送っているせいだと思います。
ぷかぷかの外販部長をやっているツジさんは、入った当初は大声出して外へ飛び出したり、よその家に飛び込んだり、ほんとうに大変でした。でも今はすばらしい「外販部長」をやっています。
ツジさんは「ぷかぷか」に来る前、授産施設にいたのですが、そこの職員は誰も今のツジさんの力を知らなかったといいます。その授産施設は、いわゆる「軽作業」と呼ばれる、単純作業の繰り返しをやっていました。ですから彼の力を発揮する機会がなかったのだと思います。彼が「ぷかぷか」に来なければ、今のすばらしい「力」を発揮する機会はなかったわけで、力を発揮できなければ,人は成長しません。
ツジさんの成長は、知的障がいのある人だって、おもしろい仕事をやれば、ほんとうにすばらしい成長が期待できることを私たちに教えてくれています。