明日横浜市経済観光局商業コミュニティビジネス課の空き店舗を活用するビジネスプランのプレゼンテーションがあるので、大慌てで原稿を書いた。直前に霧が丘グリーンタウンの空き店舗を使うことがほぼ決まったので、そこでどう関係を作っていくかでいろいろ考えた。ひょっとしたらなかなかおもしろくなりそう。以下、明日の原稿。
「 高崎といいます。街の中に障がいのある人たちの働く場を作ろうと思っています。具体的にはパンを作り、それを販売するお店です。彼らの中にはうまくおしゃべりができなかったり、字が読めなかったり、簡単な足し算もできない人もいます。でも、そんなことをはるかに超えた人としての魅力を持っています。
私は養護学校で30年彼らとつきあってきました。自分の中にある人間のイメージを大きくはみ出す人も多く、初めのころは戸惑うことばかりでした。でも、いろいろつきあってみると、私たちにはない,なんともいえない魅力をたくさん持っていて、この人たちとはずっと一緒に生きていきたいと思うようになりました。一緒に生きていった方が「得!」という感じです。彼らと一緒にいると毎日が楽しいからです。教えられるものがたくさんあるからです。
昔、私がまだ学生の頃、胎児性水俣病の子どもを抱きながら、「この子は宝子ばい」と言っていたお母さんがいて、その「宝子」の意味がどうしてもわかりませんでした。重い障がいをもった子が、どうして「宝子」なのか、ということです。でも、障がいのある子どもたちと30年付き合ってきた今、「宝子」という言葉に込めたお母さんの思いが痛いほどわかるようになりました。ぎすぎすした息苦しい今の世の中にあって、ただそこにいるだけで心安らぐような雰囲気を作ってくれる彼らの存在は、やはり「宝」といっていい存在だと思うのです。
そういう「宝」が、かつてあったおおらかさがなくなり、どんどん息苦しくなっていく今の社会には必要なんじゃないか、私はそんな風に思います。街の人たちに、そんな「宝」のような存在に出会ってほしい。彼らと一緒に街の中でパン屋を始める理由のいちばん根っこにはそんな思いがあります。
とはいうものの、彼らと一緒に働くことは、生産性の面からみると、極めて厳しいものがあります。彼ら抜きで働いた方が、ずっと効率はいいでしょう。でも、効率のみを追い続ける社会はお互いがとてもしんどくなります。世の中に一つくらいは、効率のよさを追わないところがあってもいいのではないか。彼らの働くペースを見て、なにかほっとするようなものを感じるなら、それは社会の中にあってとても大事な場所になると思います。効率を追う社会の中で疲れ切った人が「ああ、こういう働き方もあったか」と気がつくなら、それは一つの救いにもなるでしょう。
そこそこ食べられればいい。効率のいい稼ぎより、彼らと一緒に楽しく、お互いが「い一日だったね」って言えるような働き方をあえて選びたいと思うのです。もちろん最低限、パン屋を回していくだけの働き方は必要です。その働き方のレベルをどう設定するか、そこが大きな問題になると思います。
霧が丘グリーンタウンの空き店舗を利用する予定です。人通りがほとんどない商店街で、外販を主にするにしてもお店に人が来ないのはやはり問題なので、お客さんを呼び込む工夫をいろいろしたいと思います。 すぐ近くに保育園があるので、試食用のパンを持っていきます。アトピーの子どもにも安心して食べさせられる素材(牛乳、卵、脱脂粉乳などを使わない)を使った美味しいパンを職員、保護者に配ります。若い母親たちに受け入れられれば、その人たちのつながりを使ってパンの宣伝をします。 機会があれば、保育園の子どもたちを対象にパン教室をやり、子どもたちと一緒においしいパンを焼きたいと思います。子どもたちはパンをこねたり、生地で形を作ったりするのが好きなので、こういう機会を何度か持ちたい。もちろん親の参加も自由。オーブンの中でパンがふくふくと膨らむ様子を子どもたちは大はしゃぎで見ています。そういうわくわくするような場を子どもたちに提供したいと思います。
子どもと親を対象にした陶芸教室もやってみたい。自分で作ったコップにミルクを入れ、自分で作ったお皿にパンをのせて食べよう。きっといつもと違う味がするはず。親は自分で作ったコーヒーカップにおいしいコーヒーを入れ、自分で作ったお皿にはこれも自分で焼いたスコーンをのせ、自家製のジャムをはさんで食べよう。
以前担任していた子どもの親がグリーンタウンの自治会の役員をやっていたので、そのつながりを通してパンの宣伝をします。自治会のお祭りに参加し、みんなでバームクーヘンを焼いたり、肉まんを売ったりします。バームクーヘンは炭火の上に太い竹をかざし、その上に生地をお玉で少しづつのせ、竹をぐるぐる回しながら時間をかけて焼きます。そういった楽しいイベントを通して地域の人たちとつながりを作りたい。
お祭りといえば焼き鳥、焼きそばが定番だが、そんな中でバームクーヘンを焼いたり、肉まんの販売はかなり注目を浴びるだろう。とてもいい宣伝になると思う。 地域の人たちといい関係ができれば、障害のある人たちも入れて演劇ワークショップもやってみたい。演劇という、日常から少し自由になる空間の中でお互いのいい出会いがあればいいなと思う。地域の人たちが障害のある人たちと一緒に舞台に立つことができれば、すごいことではないかと思う。
カフェベーカリーぷかぷかは、ただ単にパンを売るだけでなく、地域の人たちと一緒に楽しいことをたくさんやって、いい関係を作りたいと思っています。その関係つくりの結果の中でパンが売れ、障がいのある人たちの存在が自然に受け入れられ、地域の「宝」のような存在になればと思っています。」
霧が丘での関係づくりの企画を考えているうちに、なんだか自分でもだんだん元気になってきたので、この調子で行けば、明日のプレゼンテーションはなんとなくうまくいきそうな気がする。おもしろい企画、元気な企画がいい、と説明会であったので、ひょっとしたら横浜市と神奈川県、合わせて650万円ゲットかも。